KBW2026参加レポート|2024・2025年との比較から見えた、韓国市場の変化と社会実装への動き

合同会社Encryptoは、韓国・ソウルで開催された「Korea Blockchain Week 2026(KBW2026)」に参加しました。

2024年、2025年の参加時と比較して、今年は一般事業会社の存在感や展示ブースの役割、サイドイベントの運営方針に変化が見られました。特に印象的だったのは、既存の決済サービスとブロックチェーン技術を結びつけ、実際に体験できる段階まで開発を進めている企業の姿です。

本レポートでは、メインイベントとサイドイベントでの体験、現地関係者との対話を通じて感じた変化と、日本企業への示唆をお伝えします。

メインイベントで感じた、一般事業会社の存在感と展示の変化

今年のメインイベントでは、韓国の一般事業会社による出展や取り組みの紹介が目立ちました。ブロックチェーン業界のプロジェクト同士が交流する場というよりかは、既存事業を持つ企業が、新たなサービスや技術の活用方法を来場者に伝える場としての性格が強まっていた印象です。

展示ブースの対応にも変化がありました。過去の参加時には、プロジェクトの運営メンバーや事業開発担当者と、その場でサービスの詳細や協業の可能性について話せる機会が多くありました。一方、今回は当日運営や案内を担うスタッフが対応するケースが増え、踏み込んだ事業上の会話につながりにくい場面が見られました。

当社が訪問した範囲では、ブース出展の目的が、一般ユーザーに向けた認知拡大やサービス体験の提供へと広がっているように感じられました。

連絡先の交換方法も、その変化を象徴していました。この業界では従来、名刺交換の代わりにTelegramのアカウントを交換することが一般的でしたが、今年はブースに名刺の受け皿や代表者の名刺を用意している企業が目に留まりました。担当者が不在でも、後日の連絡につなげる仕組みが設けられていた形です。

また、Tシャツなどのカジュアルな服装が多い業界イベントの中で、スーツ姿の参加者も目立ちました。一般事業会社の参加とともに、会場の雰囲気や商談の進め方にも、他業種の展示会に通じる特徴が見られました。

ステーブルコイン決済の体験から見えた、実装への距離

具体的な取り組みとして印象に残ったのが、決済事業を展開するNHN KCP株式会社の展示です。

当社が現地で説明を受け、試用したのは、USDCなどのステーブルコインを使って、プリペイド型の決済カードへのチャージにつなげる仕組みでした。利用者の体験としては、日本でSuicaなどに事前にチャージして支払う感覚に近く、暗号資産を日常の決済へ接続する使い方を具体的にイメージできるものでした。

現地担当者の説明によると、外国人観光客の利用も見据えて開発を進めており、実際のサービス導入は、韓国内の法制度の整備状況やその方向性を踏まえて判断するとのことでした。

NHN KCP株式会社は公開発表でも、KBW2026においてPAYCOアプリ内のデジタルウォレットを活用し、ウォン建てステーブルコインを想定した決済から加盟店管理、精算までの流れを実演したと説明しています。既存の決済基盤とブロックチェーン技術を結びつける取り組みが、具体的な検証段階に進んでいることがうかがえます。

今回の体験で強く感じたのは、制度整備を見据えながら、利用者が試せる段階まで開発を進めている点です。既存サービスへの導入意欲と、その意欲を実際の開発につなげるスピードには、日本との比較でも一歩、二歩先を行く印象を受けました。

ブースでは、PAYCOの物理カードが配布されており500₩がチャージされていおり、ユーザーがコンビニエンスストアなどでPAYCOを実際に使ってみることが出来ました。遠くない未来、このカードにUSDCやUSDTからDepositされた金額が反映されるのではないでしょうか。

日本企業に求められる、関心を実装につなげる意思決定

現地の一般事業会社の関係者と会話する中では、暗号資産やブロックチェーンについて、事業への応用を含めた理解の深さを感じる場面もありました。あくまで限られた対話を通じた所感ですが、Upbitなどの取引所が身近に存在する市場環境も、こうした理解の背景にあるのかもしれません。

当社がこれまでCrypto Timesと共同で実施してきた事業会社向けの勉強会では、現場の担当者が技術に関心を持ち、導入を検討したいと考えていても、経営層や決裁者の理解を得られず、検討が止まってしまうケースを見聞きしてきました。

現場に意欲があっても、社内の決裁が通らなければ、具体的な検証や開発には進めません。一方、今回韓国で目にしたのは、サービス導入に向けた課題を残しつつも、体験可能な仕組みをすでに用意している企業の姿でした。

もちろん、今回の展示だけで両国の市場全体を比較することはできません。それでも、現場の関心を経営判断につなげ、検証に必要な予算と体制を確保できるかどうかが、実装までの時間に影響することを改めて感じました。日本で社会実装を進めるうえでも、技術への理解とともに、組織として意思決定できる環境づくりが重要だと考えています。

サイドイベントは、費用対効果と参加者の接点を重視する方向へ

サイドイベントでは、昨年ごろから感じていた招待制への移行が、今回も見られました。プロジェクト側が開催目的や費用対効果を意識し、接点を持ちたい相手に絞って交流の機会を設ける動きが続いている印象です。

当社もこれまでイベントの企画・運営に携わってきた立場から、目的に応じて招待制を採用することには意義があると考えています。

広く参加者を募るミートアップは、認知拡大や新たなコミュニティとの接点づくりに適しています。一方、事業提携や具体的な商談を目的とする場合、参加者の関心や期待が大きく異なると、十分な対話が生まれず、来場者の満足度や主催者への評価にも影響しかねません。

イベントの成果を高めるには、来場者数に加えて、誰に参加してもらい、どのような会話や次の行動につなげたいのかを設計する必要があります。今回の招待制イベントへのシフトは、こうした目的と参加者の接点を重視する動きとして捉えています。

開催規模の変化の中でも感じた、韓国市場の重要性

今回確認した集計では、KBW期間中のサイドイベント数は前年の441件から227件へと、約48.5%減少しました。ただし、招待制イベントなどが集計に含まれていない可能性があるため、この数字が期間中に開催されたすべてのイベントの実態を示しているとは限りません。

https://miragather.com/ より

メインイベントでも、前年と比較して出展ブース数が減少していました。

昨年のKBWでは、ここには新規プロジェクトのブースが所狭しと展開されていたました。

その一方で、一般ユーザーやトレーダー、インフルエンサーの存在感は強く、日本で参加する業界イベントとは異なる活気がありました。トレーダーとして自ら発信し、顔を出して活動するKOLの姿も見られ、取引への関心と情報発信が近い距離で結びついていることを感じました。

現地関係者からは、ハイレバレッジ取引への関心と、韓国の若年層を取り巻く経済・社会環境との関係について話を聞く機会もありました。市場参加者の行動を理解するには、サービスや規制だけでなく、その背景にある生活環境や価値観にも目を向ける必要があります。

イベントの規模だけでは捉えきれないユーザー層の厚みと、独自の情報流通のあり方は、韓国市場を考えるうえで欠かせない要素です。今回の参加を通じて、アジアのブロックチェーン市場における韓国の重要性を改めて認識しました。

KBW2026を通じて見えた、事業化に向けた課題と機会

2024年、2025年との比較で見えたのは、一般事業会社による具体的な開発、ユーザーへの認知・体験を重視する展示、そして目的を絞った交流機会への変化でした。

特に、ステーブルコインを既存の決済サービスへ組み込む取り組みは、ブロックチェーン技術が日常の利用場面へ近づいていることを実感させるものでした。同時に、日本企業がこうした動きを事業機会として捉えるには、現場の関心を社内の理解と意思決定につなげることが課題になります。

Encryptoでは、今回得られた知見を、企業のブロックチェーン活用や海外市場への展開を考える際の支援に生かしてまいります。